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「しつこいぞ、お前も」
アスランは心底からうんざりしていた。
先日から仲間内の一人であるディアッカに絡まれっぱなしなのである。
いつもは陽気なムードメーカーを務めるディアッカをそう意識することはないが、如何せんこの男は他人の色恋沙汰に異常に興味があるらしく、目下そのターゲットは許婚者問題が浮上しつつあるアスラン一人に絞られていた。しかし今まだ流動的で迂闊なことを話したくないアスランは、適当に誤魔化している状態だ。語りたがらないのが秘密主義に思えたらしく、なお一層ディアッカの好奇心を煽るという悪循環に陥っていた。
「まぁまぁそう隠さなくてもいいじゃんよ。それともなにか?その“二番目”とやらが、そんなに大事なんか?」
うっかり“二番目”という言葉に過剰なほど反応してしまった。うんざりはしていたが、独特のポーカーフェイスまでは失っていなかったのに、だ。だがそれを聞いた瞬間、射殺さんばかりの眼光で、彼の浅黒い顔を睨み付けてしまった。
そういえばキラに侮蔑の言葉を言ったのも、この男だったことを思い出す。
「ん、だよ?そんな睨むようなことか?」
無言とはいえ、滅多に見せないアスランの剣幕に、やや怯んでしまったディアッカに、同じ仲間内から助け手が入った。
「まったくもう。本当にいい加減にすればどうですか?ディアッカ」
彼はニコル。自分達には多少の年齢差など関係はないのだが、年下だということでいつも敬語を使う。童顔と言われる外見を裏切ることなく、穏やかな空気と性格を持った人物だ。

但し。




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