一体何時からこんなことになってしまったのだろうか。きっかけらしいものがまるで思い当たらない。強いて挙げればあのプラネタリウムでの邂逅だが、それにしたって全くもって不可解で理不尽だ。

期待して裏切られるのが怖くて、誰の手も取らないようにしてきたのに。いつの間にかキラの鉄壁の防御を掻い潜り、アスランはそこに居た。
寄りにも寄って、あのアスラン・ザラが。



キラにとって押し付けられた以外のなにものでもない許婚者は、最低最悪のはずだった。それはもうありとあらゆる意味で。
なにが一番最低だったって、初めて会った時、一瞬で心を奪われたことだった。他にも嫌う要素は有り過ぎるほど有ったのも否定はしない。だが必要以上に反発したのは、惹かれたことを認めたくなくて、というのが大部分を占めていた気がする。
実際アスランは女性に困ったことはないほど引く手あまたなようだったし、また寄ってくる女を拒まない人物なのも確かだった。ザラ家の御曹司にしてあの容姿だ。生まれながらにして多くのものを“持って”いれば、癪ではあるが誰だってそうなるだろう。
でもキラは真逆だった。同じ男として、反発しない方がどうかしていると、プライドのせいにしてきた。


(たぶん結構酷いことも言ったよね…僕)



『正妻の座だけあればいいから、二号さんでも三号さんでも好きなだけ侍べらせて、精々ザラ家の跡取り作りに励めばいい』

甦る自分の台詞。
裏を返せば“心はいらない。ザラ家の財力のおこぼれに与れればいい”といきなり宣言したも同然だ。よく考えなくても失礼な話だが、言い訳させてもらうと、キラなりの無意識の理由もあったと認めざるをえない。

心なんか知ってしまって、もしもアスランが少しでも“いい人”だったりしたら、きっともっと惹かれてしまうから遠ざけた。


あの頃はまさかアスランがキラを見てくれるなんて想像も出来なかった。その逆にキラがアスランを好きになってしまうのも想定外ではあったが、無視されても棄てられても自分を保っていられるように、予防線を引いたのだ。


それも今だから分かること。




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