ポロリと出てしまった嘘に、自分で驚いた。
嘘を吐いてみて初めて、どうしても自分の口からは教えたくなかったのだと気付く。

無駄な抵抗だ、と自嘲が零れた。

『そっかー、残念。まぁ名ばかりの許婚者だったから、知らなくても当然か~』
こういう姉だと分かっているはずなのに、ふとした言動が一々気に障るのは、自分の方がどうかしているのだろうか。
第一カガリはアスランに連絡を取って何をどうすると言いたいのか。

キラの知らない所で。


そんなのいくらなんでも無神経過ぎるのではないか。


そう怒ることも出来ないキラには、不満を持つ資格もないと諦めねばならないのだろうか。



『しょーがない。直接家の方に聞くとするよ。じゃあな』
「あ、カガリ――」
鬱々と沈み込んで行くキラに気付かないカガリは、勝手に自己完結して、ブツリと通話は切れてしまった。


虚しく繰り返す電子音に、キラも終話ボタンを押し、携帯を机に放り投げると、ドサリとベッドに仰向けに寝転んだ。




(嘘、吐いちゃった)
キラは誤魔化したりはぐらかしたりすることはあっても、余り嘘を吐いたことはない。嘘を吐かなければならないほど、他人と関わることがなかったからだ。
意図せず口から零れてしまった嘘とはいえ、吐いた自分も後味の悪いものだと思ったキラだったが、続いたカガリの台詞に申し訳ないという気持ちも霧散した。あんな無神経なことを言われなければ、ちゃんと教えられたかもしれないのにと思うのは、仮定の上の幻想だろうか。


アスランはカガリを選ばないと言った。
でもそれは“今”であって、“未来”を保証するものではない。
今はカガリを毛嫌いしているアスランだって、会う内に彼女の良さに気付く時がくるかもしれないのだ。

最初あんなに反発していた自分達が、こんなことになっているのだから。


アスランを失いたくない、と思ってしまう自分が恐ろしかった。




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