誰かに対して怒りをぶつけるようなことではない。分かっている。冷静に考えてみるまでもなく、アスランはカガリを選ばないと言ったが、それだけだったのだから。
それをキラが勝手に“自分を選んでくれた”と勘違いしただけで。
いや、勘違いしたかったのかもしれない。


(胸が痛い…)
でも誤解だったとしてもしょうがないではないか。求められたことが、あんなにも嬉しかった。
しかもキラの身体からは、未だアスランが触れた部分から熱が引いてない。彼が触れた全ての場所を覚えている。
肌を重ねた夜のことを忘れられるほどの時間が経ったわけでもない。

なのにアスランはもう忘れて、他の女性を抱いてるという。
それともああいう行為は別に特別なことではなくて、何らかの愛情表現であると思い込んだ、キラの方がおかしいとでもいうのだろうか。
無論アスランの唇が紡いだ耳に心地よい甘言を、全部鵜呑みにしたつもりはなかったけれど。


たかが携帯の番号を、手に入れた宝物のように思っていた自分が酷く滑稽だ。それだって“アスランのもの”だったから、特別な意味をもったのに。
確かにカガリに嘘をついた。自分に否があったのは認めよう。でも小さな嘘の代償にしては、これは余りに重いのではないだろうか。

でも一方では分かってもいる。
まだカガリから話を聞いただけに過ぎない。
自分の目でちゃんと確かめなければ。



例え結果が辛いものだったとしても。

キラだってそう簡単には諦められない所まで来てしまっているのだから。





20111203
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