それでも常に強気のカガリらしく、予想外の出来事に一瞬怯みはしたものの「お前こそ誰だ!」と即座に反撃に出たらしい。
無論相手もアスランの携帯に女からかかってきたことが、嬉しいはずがない。直ぐ様キツい声に豹変すると「アスランなら今出られないわよ!シャワー浴びてるんだから!」と甲高い早口でまくし立て、電話は一方的に切られたそうだ。



「シャワーってことは、お前、あれだ!そういうことの前か後ってことだろ!?」
そんなこと改めて言われなくたって決まっているだろう、と妙に冷静に受け止める自分が不思議だった。吃驚し過ぎて感情が誤った回路を通ったのかもしれない。怒るどころか知りたくなかった事実を無理矢理教えられたことに腹が立つ始末なのだから、やはり自分はどこかおかしいのだ。


「…――僕、きみにアスランの許婚者を譲るつもりはないから」

まるで意図していなかった台詞が、自分のものとは思えない低い声音を伴って唇からポロリと零れた。

「はぁ!?」
カガリから素っ頓狂なリアクションが返ってくるのは当たり前だろう。
彼女にとってはあらゆる意味で青天の霹靂だったに違いない。すっかり自分は既にアスランの許婚者だと疑いもしてなかっただろうし、たった今、交していた会話とは全く繋がってないのだから。

それでもキラは撤回しようとは少しも思わなかった。




「そういうことだから。じゃ」
「お・おい!キラ!!」

引き止める声は聞こえたが、振り返るつもりなんかなかった。




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