そのある意味一番近い筈の相手に、不快だったとはいえ嘘をついてしまったという後ろめたさは拭えない。
もしかしたらスムーズに運んだウズミとの邂逅に後押しされただけかもしれないが、こんな卑怯なままの自分でいるのは嫌だと思った。


意を決し、そっとキラは柱の影から足を踏み出した。



「…―――カガリ」
「!?キラっ!?」
案の定、カガリは目を剥いてキラを見た。
「お・お前!どうしてここに?」
ここは僕の家でもあるんだけどな…という考えは、寄り付こうともしない自分にはきっと相応しくないものだろう。
「うん。実はカガリに言っときたいことが――」
「そんなことより、お前!」
だがキラの懺悔の気持ちは、相変わらず聞く耳を持たないカガリにあっけなく遮られてしまう。ムッとはするものの、そんなことくらいで一々腹を立てていたらカガリとなど到底付き合い切れないし、何をどう謝罪すればいいのか具体的に纏まってすらいなかったキラは敢えて口を噤んだ。
でもそれならばいっそ彼女の言葉も聞かなければ良かったのだ、と後になってキラは後悔する。


それでもその時はカガリの大層な剣幕に、絶対これはキラのついたあの嘘がバレたのだと思った。謝ろうとした矢先だったから、考えようによっては渡りに船なのかもしれない。
「ごめんね、カガリ。僕、アスランの携帯ナンバー、本当は知ってたんだ」
「はぁ?」
カガリは眉を下げ、心底意味が分からないという顔付きになった。ならばなぜ嘘をついたのだと理由を訊かれたら、今度こそ正直に答えようとキラは密かに決意する。


自分もアスランに惹かれていて。
だから教えたくなかったのだ、と。




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