アスランの婚約については、少なからず興味があったし、話の矛先を変えれば話しやすくなるのではと考えてのことだ。何故彼が隠すのかは知らないが、いっそはっきりしてしまった方がいいと思ったのだ。どうやったってアスランが周囲の関心を引いてしまうのは変えようもないし、下手に隠せばなおさら逆効果に成りかねない。何もかもが明らかになれば、ディアッカにもそれ以上、絡む理由がなくなる。
要するに中途半端が一番いけないのだ。

だがアスランがこんな行動に出るとは、ニコルの予想を越えていた。
止めようと僅かに腰を浮かせたニコルにだけ聞こえるように、潜めたような低い呟きが落ちてくる。
「今まで俺が散々遊びまくってたのは事実だしな。状況が変わったからって手のひらを返すなんてムシが良過ぎるだろ」
「それはお互い様ってやつじゃないんですか?彼女たちにしたってアスランに近付く理由は、十中八九貴方を自分のステイタスとして加えたいだけだと思いますけど」
ニコルの言葉はどこまでも辛辣だった。
普段の言葉や態度には一切見せることはないが、こんな女たちなど低能な屑だと位置づけているからこその発言だ。そこまで冷酷にはなり切れないものの、アスランだって大差なかったのだから、ニコルの言っていることもよく分かる。
暇潰しとはいえ毎日のように屯ろし顔を見ていながら、ろくに名前すら覚えてない女たちが殆どであることからも、彼女らを一個人として捉えてなかったことの証明だった。

でももしも。彼女らの中に、少しでも本気でアスランを想う気持ちがあったとしたら。


アスランの“思うところ”とはそれだった。
今のアスランはその気持ちを無碍にはしたくないと思ったのだ。


いうまでもなく、こんなことを考えるのは、キラの影響だろう。彼に惹かれたことにより、初めて“誰かを好きになる”ことに伴う感情の起伏を知ってしまったから。




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