興味




「金の話か?だったら残念だったな。車は正真正銘、自分の金で買ったものだし、維持費も賄ってる。因みに今お前に買った服も、父上は一切関与してない」
そんなの嘘だとキラは思った。いくらセレブな生活に疎いとはいえ、一大学生がこんな高級スポーツカーを買えるわけがないことくらいは常識の範囲内だ。
「へえ。きみ、お金のなる木でも育ててるの?」
精一杯皮肉を込めて応酬した台詞にも、アスランはサラリと宣った。
「似たようなものかもな。株だ」
「か・株?」
「知り合いにファンド系の会社の二世がいるからな。以前ちょっと手ほどきを受けたことがある。マネーゲームは性に合わなくて、今は余り熱心にはやってないが、おかげで足が出ることはない」

駄目だ。世界が違い過ぎる。
キラは頭を抱えたくなった。

株なんて無縁の世界だし、何よりそういう経済に関わることでなくても、アスランならきっとソツなくこなしてしまうのだろう。


(こんなだからプライドに障るっていうか…。中々素直な態度に出られないんだよね)
素直になれればどんなにいいか…と自然な流れで思ってしまった自分を、今度こそ脳内の思考を停止することで戒めた。

こんなことを考えてしまうのも、この車内に漂う甘ったるい空気のせいだ。うん。きっとそうに違いない。

キラがそんな妙な納得の仕方をしているとは知らず、一方のアスランは律儀に訂正を入れてきた。
「あ、最初の株は父上からもらった小遣いを元手にして買ったから、全く関わりがないってのは間違いだな。その金をそっくり返すことは出来るが、やってないし」
アスランは事実を有りのままに話しただけなのだろうが、どこか的が外れている台詞に、漂う甘い空気はキラが努力をするまでもなく、希望通りに薄らいできた。それはそれで少し悔しい気分になる。

キラがこんなに意識しているのに、アスランにとっては場の空気など、どうでもいい些細なことなのだろう。




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