興味




「眠くなったか?」
「………ん…」
短く肯定が返った時は、もう夢うつつ。
「寝てもいいぞ」
誰かが傍に(しかもこんなに近くに)いるのに、無防備にも眠くなるとは一体自分はどうしてしまったのだろう。そんな思考さえ甘い誘惑に逆らえず、キラはゆっくりと意識を手放した。

アスランの匂いとアスランの体温に包まれて。




「おやすみ、キラ」

同じ眠りでも激しい波に付いていけずに気絶するのと、今の安らかなものでは別物だ。どちらも極度な身体の疲労に起因するものでも、今度は朝まで目覚めることはないだろう。
アスランはあどけなく無防備な寝顔を晒すキラの頬に、優しく手を添えた。

キラを見下ろすその瞳が、頬を辿る指先よりももっと優しい光を帯びていることを、残念なことに誰も、アスラン自身すら気付くことはなかった。


そうしてやがてアスランも、とろとろと心地よい微睡みに導かれるまま、眠りについたのだった。




◇◇◇◇


「ここでいいよ」
キラはアパートの近くのコンビニ前で、アスランに車を停めさせた。この先は道も狭くなるし、こんな高級車など入ってくるような場所でもないから、悪目立ちしてしまう。だが勿論アスランにそれが伝わるわけがなかった。
「部屋まで送る」
「ちょ、何恥ずかしいこと言ってんの!夜遅い訳でもないし、第一僕男だし!」
「性別が安全牌にならないことは昨夜身を以て理解したと思うんだが…まぁそれは解らないなら解るまで付き合うとして。今俺はお前がまともに歩けるのかどうかを心配してるんだが」
「あ・歩けるよ!!」
何だか物騒なことを言われた気がしたが、取り敢えずキラは送られるなんて真っ平だった。

しかし言ったアスランも引っ込みがつかない。朝方料亭を出て車に乗るまでの間、キラの足取りはフラフラで時々何処かが痛むように顔を顰めたりしていたのに気付いていたからだ。無論全てに心当たりがあり過ぎるアスランだが、場所柄、あからさまに助けてやるのは憚られたのだ。




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