興味




キラは多分独りで戦っている。アスハ家の息子であるという受け入れ難い現実と。ウズミの愛人だったという母親は、きっとキラを愛情込めて育てたのだろう。だからこそ受け入れて甘えてしまえば、母親の存在をなかったことにされてしまいそうで出来ないのだ。だから必要以上に自分を鎧い、肩をそびやかす。
俯くことがないように。生まれたことを後悔しないように。

(俺も大概だとは思うが、こんな不器用な奴、他にいないよなぁ)


だけどわざわざ好き好んで重い荷物を背負うような生き方は嫌いではない。それどころか手を差し伸べてやりたくて仕方ない。
誰も受け入れようとしないキラに、せめて信じて欲しいと願ってしまう。



「……ん‥」
ふとキラが小さく身動いだ。覚醒が近くなったのだろう。元々強制的に眠らされていたようなものだから、少し経てば目覚めることは予想していた。
「お目覚めか?」
可能な限り優しく聞いたつもりだったが、キラは飛び上がらんばかりに驚いたようで、実際弾かれたように身体を起こしかけて――その直後後ろへ倒れそうに傾いた。
「おっと」
慌てて背中に腕を回して支えてやる。ベッドならばその心配はないのだろうが、ここは生憎畳の上だった。頭から倒れれば良くないのは分かりきっている。
と同時に場所など気にならないほど没頭していたのだと改めて自覚し、自然と苦笑めいたものが込み上げた。

「な・何がそんなに可笑しいの!」
途端に鋭い声が飛んで来る。


目が覚めた瞬間は状況が飲み込めなかったキラだったが、これでもかというくらい事実は目の前にあって、嫌でもすぐに状況を悟ってしまったのだ。
(うわ~っ!僕ったら、とうとう――!!)
パニックとまではいかないが、まさか事後がこれほど恥ずかしいものだとは考えてもいなかった。




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