興味




自嘲気味な笑みを浮かべ、やっと呼吸が落ち着いてきたアスランは、ふとキラが静か過ぎることに気付いて、首を巡らせた。


「…―――キラ?」
声をかけてみるが反応はない。
本人も言っていたように経験のなかったキラに、随分と無体なことをしてしまったのだから、怒っているのなら頭の痛い事態だ。最後の方はアスランの理性も溶け切っていて制御不能だったと言っても、果たして分かってもらえるだろうか。

だがその心配はどうやら無用だった。


アスランはダルい体を起こしてこっそり顔を覗き込んでみた。キラの瞳は完全に閉じられていて、長い睫毛が頬に影を落としている。
反応がないのは当然だ。キラは怒ってアスランを黙殺しているのではなく、気を失っていたのだ。
「お・おい!キラっ!?」
慌てて軽く頬を叩くと、僅かに睫毛を震わせて何事か呟いた。しかし全く目覚める気配はない。
ザッと眺めたキラの身体には出血箇所は見当たらなかった。どうやら身体の不調が原因で失神したという訳ではなさそうで、心底安堵する。

無理矢理自分を落ち着かせ改めて見れば、キラの頬は上気して赤く染まっていたし、僅かに開いた唇からはややペースは早いものの、規則的な呼吸音がしている。
与えられた快楽が余りにも強烈で、意識を飛ばしてしまっただけなのだろうとアスランは結論付けた。



眠りを妨げないよう、慎重且つ優しい手つきで髪を梳いてやりながら、アスランは安らかに目を閉じているキラのことを思った。

意地っ張りで、決して弱い部分を見せようとはしないキラに、意地でも屈伏させたいという気持ちにさせられることは、これまでも何度もあった。いや、それは今も変わらず胸の内にあるが、こんな無防備な顔を見ていると、守ってやりたい気分に急速に囚われてしまいそうだった。




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