興味




キラはこれまでのアスランの所業込みで躊躇している。無論そんな女たちとキラでは比較の対象にもならないが、それを口にしたところで過去の自分を消せるわけでなし、ただ嘘くさい言い訳に聞こえてしまうだけのような気がした。

アスランからしてみれば、普段はあんなに刺だらけのキラが、そんな些末なことを気に病んでいる事実が、可愛くて仕方ないというのに。

これはもう、有りのままを思い知らせてやる他はない。



「あっ!?」
アスランはおもむろに未だ顔を隠しているキラの手を取り、自分の熱く滾る場所へと導いた。同じ男であるキラに、これ以上ない真実を突き付けたのだ。

「―――分かるか?お前だけじゃない」


残った片手で相変わらず顔は見えないままだが、アスランの言いたいことは伝わったらしい。小さく声をあげたキラの元々赤かった顔が、更に驚くほど赤味を増した。
「女に対してなら本能を理由に出来る。だがお前じゃそうはいかないだろ?」

「…―――も…?」

「ん?」


「…アスランも……僕のこと‥その・欲しいって、思ってるってこと?」


「………ああ」



アスランが可能な限り優しい声で頷いてやってからも、キラは暫く動かなかった。必死で何かを考えているようなその姿に、アスランもキラに付き合う形で静かに待ってやる。

やがてキラは顔を隠していた手を、ゆっくりと移動させた。
「!!」
瞬間、アスランは息を飲んだ。
もう見慣れているはずのキラの顔が、凄絶な色香を帯びて、別人のように艶めかしく映ったのだ。


本人は絶対に無自覚だろうが“誘う顔”をしていた。




キラは移動した手の持って行きどころに迷ったように彷徨わせ、結局パタリと畳の上へ投げ出した。意地っ張りなキラの、多分これが精一杯の意思表示なのだろう。




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