興味




「何でそんなものを被ってるんだ」
「…え?雨だから?」
見当違いの答えに、更に脱力する。
「そうじゃなくて。傘は」
「忘れたんだからしょうがないじゃない」
「朝あんなに降りそうだったのに持って出なかったのか?――ああ、それにしても寄りにも寄って…」
アスランが頭を抱えたくなったのも無理はない。

キラが雨避けに被っていたのは、どこからどう見ても立派な“ゴミ袋”だったのである。


他人からどう見られようが、より実益性を優先するキラには、アスランが何故たかが傘代わりにそれほど拘るのかが分からない。上着を頭から被ったところで水はすぐに浸透してくるだろうし、確かに見た目は褒められたものではないかもしれないが、キラにとっては最良の選択だったのに。
どうせ誰もキラのことなど気にしないし、帰宅するまでの少しの間だけだ。より濡れない方法を選択したことに何の文句があるというのだ。別にアスランに勧めたわけでもないのに、そんな嫌そうな顔をされる覚えはない。

そう言ってやろうとして開いた口からは、小さなくしゃみが出てしまった。
途端に有無を言わせず腕を掴んで引き寄せられる。突然のことに反応が遅れて、件の車の助手席に押し込まれたキラは、続いて運転席に乗り込んで来たアスランに目を丸くした。
「きみが運転するの?」
「俺の車を俺が運転するのは当たり前だろう」
こういうお坊ちゃんが自分で車を運転することなどないと知っていたから尋いたのだが、やはりどこか噛み合ってない。
諦めたキラは取り敢えずシートに背を預けた。


外気が遮断された車内はほんのり温かく、濡れ鼠まではいってなかったキラは、それでも梅雨寒の気温に手足がすっかり冷えてしまっていたことに気付いた。




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