興味




「でも‥あ・っん!」
常識的な言葉など聞きたくはなくて、アスランはわざと少し乱暴に胸の飾りを引っ掻いた。声をあげ、眉を顰めた表情は痛みよりも快楽の方が勝っているように映る。それがアスランの情欲を煽った。
「それとも。逃げるんなら今の内なんじゃないか?」
逃がすつもりなどないし、キラが既に逃げられる状態ではないことを分かっていて、敢えてアスランは訊いた。
何よりもこの行為が自分の意志であると、キラに自覚して貰うのが目的で。
ひょっとしたら、強引さや雰囲気に流された成り行きではないのだと、アスランが信じたかったのかもしれない。


一瞬動きを止めたキラは、意外にも僅かに微笑んだようだった。
「……それ、前にも訊いたよ?」
強気とも取れる言葉に、思わず見惚れたかのように、しげしげと眺めてしまった。

“前”とはキラがザラ家に押し掛けて来た日の夜のことだ。


あの夜、同じ質問をしたアスランに、キラは逃げる選択をしなかった。


「…そうだったな」
ならばもう遠慮はしない。



そもそも父親との交渉も上手く行ってないのが現状だ。向こうは相変わらずカガリを取れとの一点張り。あの男はそうしてザラ家を一代で大きくしてきたのだから、その功績を無碍にする気はないし、今更変われと言っても難しいのは理解出来なくもない。
だがアスランはこれからのトップはそんなワンマンでは駄目だと思っていた。世の中は多様化し、情報は溢れんばかりだ。経営者とはいえ金勘定ばかりしていていいはずはないのだ。

反面、アスランにとってパトリックのような社長になるのはきっとそう難しいことではない。顔の造作こそ母親譲りだが、彼女が生前言っていたように「中身はパトリックそっくり」なアスランである。だからこそ信頼の出来る者を傍に置く必要があった。間違った選択をしようとしたら、横っ面を殴り飛ばしてでも止めてくれるような相手。無論それば馬鹿では許されない。少なくともアスランを唸らせるような何かを持っている人間でないと勤まらないのだ。




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