興味




そんなつもりではなかった。今になって言い訳にしかならなくても、絶対に違うと言い切れる。
だけど最初からアスランはこれを“デート”だと言っていたし、それでも拒まず付いてきたのは自分だ。第一彼の言う“デート”が一体どこまでを指すのかなんて、子供じゃあるまいし改めて訊くまでもない。
そうだ。自分たちは子供ではない。今時婚前交渉不可なんて、有り得ない話で、ならばやっぱりアスランは“そういうつもり”でキラを誘ったのかもしれない。
本気で嫌なら今すぐ逃げればいいのだ。別に閉じ込められているのではないから、すぐ傍の障子を開けて廊下へ出れば、アスランも追い掛けてまでは来ないだろう。
なのにキラの身体は縫い留められたように動かなかった。これでは許したと言っているようなものだと分かっていても。



「キラ…」
すぐ隣に移動してきたアスランが膝をつく気配がする。いつまでも視線を逸らしているのも限界で、キラは恐る恐るアスランの方を向いたのだが。
「あ!あのさ!」
ただ見つめ合っているのは余りにも恥ずかしくて、キラは弾かれたように喋り始めていた。
「僕――っ!僕、ね…」
「うん?」
雰囲気もなにもあったものではない大声を出してしまって、自己嫌悪に弱くなっていく語尾を、アスランは優しく促してくれる。
「…僕、これまで誰ともっていうの?付き合ったこととかなくって…」
そうだろうな、とアスランは妙に納得した。
ルックスだけをいうなら周囲が放っておかないレベルだから、到底信用出来るものではなかっただろうが、キラは普段から周りに拒絶オーラを張り巡らせている。どう考えても軽い気持ちで声をかけられるタイプではないのだ。特定の相手と深く馴れ合って、色々と詮索されるのを煩わしく感じてのことだろう。聞けば誰でも知っている名家の家族を持っているのだから。
唯一例外があのレイとかいう“後輩”の存在だが、流石にキラがあの男をそういう意味で見ているのではないことくらいは、段々と分かってきた。

だが誰とも付き合った経験がないことが、今どんな関係があるのかは謎のままだった。




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