興味




複雑な思いはやはり普段のキラらしい、勝ち気な考え方で払拭した。
(ふん!お坊ちゃんめ。大体小遣いだっていくら貰ってんのか分かったもんじゃない!)
だけど以前ほどそこの所は悔しくはない。金持ちの家に産まれたのはアスランのせいではないし、そんなことで彼を妬むのはお門違いだとさえ思う。
「金持ちなんて」と十把一絡げに忌み嫌っていたキラにしてみれば、それは大きな変化であった。


もっとアスランのことを知れば、また自分は変わって行けるのだろうか。

変わるのが怖いようで、でもワクワクする。



「そ・そう!じや、遠慮なく奢られてあげる。美味しいご飯、食べさせてよね!」
精々強がって言ったつもりだが、アスランにはまるで通用しなくて、逆に面白がらせてしまったらしい。
「ご期待に添えるよう、努力しましょう」
わざと慇懃無礼な口調で答えたアスランは、クスクスと上品な笑みを零した。


見惚れるほど、綺麗な笑顔だった。




◇◇◇◇


到着した店は看板すら出してない、パッと見は一般の人が住んでいるだけのような日本家屋だった。無論規模は“一般”とは明らかにかけ離れたものではあるのだが。

現れた上品な中年女性にしずしずと廊下(恐ろしく長い)を案内されて、二人で使うには広過ぎる個室へと通される。アスランの後ろを、何故か足音を潜めて付いて来たキラは、座布団の上にひたすら身を縮めて座ると、落ち着きなくキョロキョロと辺りを見回した。
お品書き的なものもあるにはあったが、チラリと見せてもらった流麗な文字で書かれたそれには、値段は勿論のこと、ろくに料理名さえ載ってない有様だ。




10/32ページ
スキ