興味




講義を終えた大学の昇降口に佇み、キラは上空を睨み付けた。尤もそんなことをしても雨雲が去るわけがない。
だいたいこんな事態に陥ったのは、多分にキラ自身のせいなのだ。空は家を出る前からどんよりしていた。だがおかしな所で面倒くさがりのキラは傘を持ち歩くのが何となく億劫で、朝降ってなかったのを言い訳に、手ぶらで家を出たのだ。今日は一日中講義のある日だから、もし降り出しても帰りにはまたやんでいるかもしれないという希望的観測もあった。
無論この梅雨時にそんな都合のいい展開を期待する方が馬鹿なのである。
昼過ぎに降り出した雨は時間とともにどんどん強くなって、キラが帰宅する頃にはものの数歩でずぶ濡れになる程度になっていたのだ。

朝の自分を激しく呪ってみても後の祭り。以前濡れて帰宅した時、酷い風邪をひいたことのあるキラは、再びそれを繰り返すのに躊躇した。そして傘の代用品を求めて周囲を巡ったキラの視線は、やがてあるものを捕えたのだった。




◇◇◇◇


「…―――激しく否定したい気分だが…もしかしなくても、キラ・ヤマトか?」

大きな声ではなかったが、不思議とよく通るテノールは、雨音に掻き消されることもなくキラの耳に届いた。俯いて駆けていたキラだが、頭に被った物をひょいと捲り上げて声の主を見る。
自分より頭ひとつ分高い位置にある端整な顔は、予想通りアスラン・ザラのもので、傘をさして立つ後方にはいつもの高級車ではなく、同じ黒だがスポーティな車が停まっていた。

一方、間違いないと確信したから声を掛けたのだが、改めてキラの顔を確認したアスランは渋面を浮かべずにはいられなかった。




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