反抗




「商品価値の下がった僕なんか、さっさと見切りをつけたってことなんでしょ?いかにもきみらしいやり方だよね!」
「話が見えないんだが」
「とぼけないで!僕との婚約解消を言い出したのはそっちのくせに!!」

アスランは難しい顔のまま何かを考えている様子だったが、キラにも配慮する余裕などありはしない。

「そうだよね!きみは二番目なんて最初から願い下げだった!女の子には不自由してないし?今までがどうかしてたんだよね!」
「破棄の話がこちらからというなら父の勝手な判断だ。俺は望んだ覚えはない」
「なにそれ、言い訳?いくら厳格なお父さんっていったって、結婚するのはきみなんだよ!その本人の了承もなくこんなこと―――」
「あの父ならあり得るな」
サラリと認められて、絶句した。

お世辞にも普通の親子関係とは言い難いウズミでも、先にキラ本人の意志を伺ってくれる。逆らったことがないから聞き入れてくれるかまでは分からないが、婚約の時も結局はキラが決めたと言えないこともない。例えそれがアスハ家の為を思っての決断だったとしても。


「うそ…」
「何が嘘なもんか。生憎とあの父親はそういう人間だ。人を人とも思ってない。そうでなければ一代でうちをここまで大きくするのは不可能だっただろうし、望みを叶えるためならば、なりふり構わないだろうな。息子さえ駒の一つくらいにしか思ってない」
「………………」

アスランはまるで他人事のように冷めた口調で話したが、キラの怒りは完全に削がれてしまった。なんとなくそれがアスランの強がりに聞こえたからだ。


思えばザラ家を訪れてから数人の使用人と接する機会があったが、皆が皆隅々まで教育の行き届いた完璧な対応だった。それは裏を反せば事務的で冷たいともいえるのではないか。
アスランの母親はまだ彼が子供の頃に亡くなったと聞いているから、そんな人たちの中でずっと一人で過ごしてきたのだ。




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