反抗




「そうだ。ではひとつだけ聞かせてもらえますか?」
「なんだ?」
キラからの要求など初めてで、膝を乗り出したウズミだったが。
「僕との婚約解消を言い出したのは、アスハ家からだったんでしょうか?」
もたらされたものは要求ともいえない些細な質問でしかなく、ウズミは憐れなほど力なく肩を落として答えてくれた。
「いや、私も一度お前を出しておいて、やっぱりカガリにしてくれとは流石に言いにくかった。それを察したのだろう。言ってきたのは向こうからだ」


「そ‥う、ですか…」

ウズミが些細なものと決め付けた質問だったが、キラにとっては大きな影響を受ける答えだった。

前触れもなく萎れてしまったキラに、しかしウズミは掛ける言葉にも困る始末。親子関係の希薄さは今に始まったことではないが、ウズミの記憶ではキラは確かアスラン・ザラとの婚約を歓迎してなかったはずだ。
カガリの想いも成就して、八方丸く納まったと安堵していたウズミは狼狽えた。
「キラ。何か、私にして欲しいことはないのか?」
精一杯のつもりで言ったウズミに、キラは薄く笑って立ち上がった。
「よくして貰ってますよ。これ以上望むことなどありません」
「……そうか…」
「では、僕はこれで」



きっともう一生、ウズミとの距離は縮まらないのだろう。何かを望んだわけでもないし、キラは一向にそれでも構わなかった。何年も母親の元で不遇の時代を送らせたキラに後ろめたさを感じ、色々と気に掛けてくれているのは分かるが、それだってキラが彼の意志に従っているからだと知っている。進路すら決められた通りに進んだ。尤もキラの方にも将来に向けての強いビジョンなど有りはしなかったのだが。

ウズミのことはいい。それよりも。




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