反抗




「アスラン・ザラとの婚約のお話しですね」
「う…む。既にカガリから聞いているのだな」
言いにくそうにだがウズミは頷いた。
「勝手に押し付けておいて、今更と思うだろうが」
(やっぱり破談なのか…)
ならばいっそ頭ごなしに命令してくれればいいのにと、もどかしくもなる。気を遣ってくれようと、優しく言われようと事実は変わらないのだ。
「分かりました。婚約は解消します」
「お前はそれでいいのか?」
いいもなにも“絶対者”の“決定”に異論を唱えるカードなど、最初から与えられてない。そう反発する気持ちはあるのに、口から出たのは正反対の言葉だった。
「今だから言えることですが、元々不本意な婚約話でしたし。僕なんかを差し出さなくても両家の繋がりに支障がない局面になったのでしょうから、寧ろ喜ばしいことなのでは?」
「お見通し、ということか」
「いいえ。ただこうなることが当たり前だっただけです」
「キラ…」
ウズミが苦しそうに顔を歪めた。
「私は別にカガリが嫌がったから、お前を差し出したというわけでは…」
「………………」

何度もいうが、ウズミはキラのことを嫌っているのではない。キラの方が諦めてしまっているだけた。キラが求めるものを、彼からは貰えないと悟ったから。
それが何なのか具体的にはキラにも言えはしないが、親子の釦の掛け違いがあるとすれば、その辺りに誕を発していることは漠然と想像出来る。

それは母を亡くした時、諦めたものに似ていた。


そしてウズミにしても妾腹の息子より、次期アスハ家当主と定められたカガリを遇するのは、遺伝子に組み込まれた情報のようなもの。それを責めても意味はないのだ。

諦めるのには慣れていた。




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