反抗




「まさかとは思うけど…、きみ笑ってない?」
意図してなったわけではないが、“クール”で“ポーカーフェイス”が売りのアスランも、キラにかかれば驚くほど見破られてしまう。それも悪くはないけれど、今は精々惚けておこう。誤解でしかないことで、これ以上臍を曲げられては適わない。
「笑う?何で俺が。そんなことよりしっかり確認しておかなければならないことがある」
「…なに?」
「反抗は出来るのか?」
「?」
アスランの言葉は端的過ぎて、意味を掴みかねたキラは小さく首を傾げた。鋭いようでどこか抜けている。
それもキラの魅力の一つではあるが、曖昧にしておいていいことではなかった。
「今のままなら両家同意で俺とカガリ嬢の婚約は成立するんだぞ」
「あ!」
色々あってすっかり忘れていた。

そうだった。ウズミに話を切り出され、アスランがカガリを選んだのだと哀しくなったのも手伝って、キラは婚約解消を承知してしまったのだ。

それを撤回し、ウズミの意志に逆らわなければならない。


自分にそれが出来るだろうか。



「何度も言うが父がなんと言おうと俺にカガリ嬢と婚約する意志はない。手強いだろうが徹底抗戦するつもりだ。でも俺ばっかりってのは狡いだろう」
途方に暮れる様子のキラに、アスランはわざと意地の悪い言い方を選んだ。キラに弱気になって欲しくなかった。企み通り、“狡い”という挑発に乗って、キラの瞳に強い光が戻ってくる。
そのチャンスを逃さずに、アスランは駄目押しの一言を付け加えたのだった。


「ウズミ・ナラ・アスハの命令に逆らうことがどんなに難しいことか。そのくらい朧気ながら分かってるつもりだ。それでもお前が本気で反抗する姿を、そろそろ俺にも見せて欲しい」




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