反抗




ピリリリリ…


「!!」

空気を貫くような場違いな電子音に、二人は同時に動きを止めた。
まるで無遠慮に鳴り出したそれが携帯のコール音だと判断し、アスランは黙殺しようと再びキラの身体に顔を埋めたが、一度正気に戻されたキラにはとてもではないが行為の続行は不可能だった。

「あ‥すら…。でんわ」
出るように促す声が信じられないほど擦れていて、キラは更なる激しい羞恥に襲われる。
「いいから…放っとけ」
だが一言の元に却下したアスランの声も同様で、それがキラに妙な安堵と僅かな余裕を与えた。
「だ・駄目だよ。何か‥重要な用件かもしれないじゃ・ない。ね?」


アスランにはこんな時間にかけてくる輩の予想はついていたのだが、コール音は鳴り止まない。というより想定通りの相手なら、出るまでしつこく鳴らし続けるのは明白だったのだ。

「ええい!くそっ!」
およそ似つかわしくない台詞を吐き捨て、とうとうアスランはキラの上から体を起こした。


帰って来た時、反対側のソファに無造作に脱ぎ捨ててあった上着を探る。外から見えるディスプレイには思った通りの名を表示されていて、猛烈に腹が立った。


「…―――はい」
怒鳴り付けたい衝動を堪えて、なんとか落ち着いた声を出した。
『おーや、ひょっとしてご機嫌ナナメ?』
電話の向こうから聞こえたのは、周囲の騒つきと、お調子者のディアッカの声。不本意ながら付き合いの長さからアスランが本気で怒っていることくらいは察知出来るだろうに、別段萎縮する気配はない。
『まぁまぁ。おうちからの呼び出しだって難しい顔して帰ってったお友達を、慰めてやろうかな~って僕ちゃん電話した訳よ』
「今すぐその気色の悪い喋り方をやめろ。それに別段慰めてもらわなければならない事態は起きてない」

この言葉に僅かに乱された服を直していたキラが、ピクリと手を止めた。
アスランの電話の相手を知る術はないキラにとって、今の台詞は女と話していると思っても無理はないものだったのだ。




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