混乱




(…………)
非常に不本意ではあるものの、実はキラの容姿はアスランの好み真ん中直球ストライクだ。
そろそろ認めざるをえないのか。
(いいや!しかしあいつは性格が悪い!!例えばだな~…)
意味の無いことだと思いながらも、悪態をつくためだけに、知る限りのことを浮かべようとした。だがすぐにそれが上手くいかないことに気付く。
アスランにとって何よりプライドを傷つけるはずの、自分を格下に見るキラの瞳をとうとう思い出せなかった。


そういえば今までアスランはキラ自身から卑下されたことがあったろうか。

少なくともパトリックは“アスハ家”というブランド目的だから、父が見下げられるのは当然だ。しかしキラからは女癖の悪さを罵倒されたことはあっても、良家にありがちな“家柄”とか“格式”めいたプレッシャーを受けたことはなかったように思う。因みに女癖については心当たり満載なので、言われても仕方のないことなのだ。
それを棚に上げるつもりはない。


拒絶はされていると思う。
間違いなく。
しかしそれは100%アスランのせいだけではない、と感じられるのは何故だろうか。




「っ!?」
「わっ!」
突然息を詰めた声と共に軽い衝撃を受けて、アスランはよろめかないように咄嗟に足を踏張った。
「あ、ごめんなさい!僕、ちゃんと前を見てなかったから…」
「―――キラ?」
「え!?ア・アスラン!?」
通行人を避けて壁ぎわにいたアスランに、わざわざぶつかって来た相手。

会おうとすれば会えず、いつもこんな風に思わぬ所で会ってしまう。


アスランにとってキラはそういう巡り合わせになっているのかもしれないと、ままならない運命に毒づいた。




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