混乱




車が停車したことに先に気付いたのは、単にアスランの方が場慣れしていたに過ぎない。そのくらいには溺れていた。
もっと彼を知りたいと、熱い欲に支配されていた。


(――っ!そんな訳があるはずない!!)
自分は今混乱しているだけだ。
どれだけ潔癖なフリをしていても、キラは時と場所を選ばないような恥知らずなのだ。

脳裏を金髪の男に縋りついていた、あの日のキラが過った。
あれはこの目で見た、紛うことなき真実だ。


アスランは膝に置いた拳をぎゅっと握り込んだ。



きっと相手が誰でも拘ることさえないのだろう。
キラはアスランの突然の暴力に等しいキスにさえ、確かに応え始めていたのだから。



我ながら苛立ちに任せた、無体な行動だったと思う。車内でなければ、いや、キラのアパートへ到着しなければ、もっと先へと突き進んでいたかもしれない。そんなアスランの欲に晒されながらも、キスを解いた後さえ、キラは完全に離れることはしなかった。
自分が嫌っている男相手でも、キラはそうなのだ。




無理矢理失望することで、頭は急速に冷えていったアスランだったが、折れそうに細い腰と、甘い唇。そして何より触れた熱の感触だけは、いつまでも握った拳の中から消えることはなかった。




「本当にツイてない時って、あるんだな…」





20100619
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