混乱




「人がいいのも大概にしろ!それとも何か!?あの男が気に入ったとでも言うのか!?」
「どうやったらそういう結論になるの!そっちこそ馬鹿なんじゃないの!?」
「な――」


また同じパターンだ。
キラが自分を見る目はいつも同じ。
まるで仇を睨み付けるかのような、厳しい瞳。これではストーカー男を見る時の方が、遥かに穏やかだったくらいだ。

比較しても意味のない事実に、またどうしようもなく煽られた。


「ああ、そうだったな。お前は時と場所を選ばないあばずれだったんだ。だったら」
「ちょ…」
「相手は、俺でもいいってことだよな?」
不意にアスランの体がキラへと近付いて来た。驚いて離れる間もなく見上げたすぐ至近距離に、冴え渡る翡翠の光を見た瞬間、唇に温かい感触。


自分が何をされているか理解したキラは、当然身を捩り声を上げようとしたが、その動きを逆手に取られて腰を抱き寄せられ、開いた唇からは易々とアスランの舌の侵入を許してしまった。驚愕に見開かれたままだった瞳は、すぐに息苦しさにこみあげた涙に縁取られる。

角度を変え思う様蹂躙される口内。怯える舌を絡め取られ、より迎え入れるかのように口を開けさせられた。
「んん――っ!」
自由にならない両手は辛うじてアスランを押し返そうと藻掻いていたが、所詮そんなものに何の効力もない。力では勝てない上に、こういうことに慣れたアスランとでは、経験値で圧倒的に不利なのは間違いなくキラの方だった。


「…――あっ?」
腰にあったアスランの手が上着の中へ移動すると同時に、舌先で上顎を撫でられて、キラの身体がビクンと跳ねた。
そんな反応をしてしまった自分が恥ずかしくて、なおも離れなければと思いはするが、意志に反して益々身体から力が抜けて、やがて思考すらも溶かされてしまう。




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