混乱
・
正直助かった。あのままいけばアスランは激情にかられて手を上げていたかもしれない。
仮にそうなったとしても、ストーカーに対してなら正統性も認められると思うが、先に手を出すのはやはりいただけない。それに男ではなくキラを殴ってしまいそうだったのだ。
易々と男に侵入を容す、キラに怒りの矛先が向いてしまっていたから。
しかも正当性があろうとなかろうと、アスランは時期ザラ家の当主だ。暴力沙汰など回避するにこしたことはないし、そのくらいの知恵はある。
これまで一瞬たりとも、それを忘れたことなどなかったのに――…。
「ねぇ、あの人…」
ハッと我に返って、アスランは一旦キラを目で制し、手元のボタンを操作した。僅かなモーター音がして、運転手と後部座席の間に仕切りが出来る。
聞き耳を立てたりはしていないだろうが、これで完全に遮断されたわけだ。
何故こんなことをしたのか自分でも分からない。
ただ何となく嫌な展開になる予感はあった。
「…あの人、どうなるの?」
アスランの行動に少なからず驚いたようだったが、キラはそれでも質問を変えなかった。
「ストーカーのことか?」
「まさか警察に連れて行かれちゃうの?」
「そんなことはしない」
律儀に教えてやる必要もなかったが、キラがどんな反応をするのか知りたくなった。
「警察に突き出された方が良かったと思う羽目にはなるだろうがな」
「そ・んな――」
警察に連行されないと聞いて一瞬ホッとしかけたキラは、すぐに表情を強ばらせた。
「それってどういうこと!?一体あの人をどうするつもりさ!」
「お前は誰を庇ってるつもりだ!」
突如声を荒げたアスランに、キラの肩がビクリと揺れた。
「あのまま付いてこられてたら、どうなってたかちゃんと考えて言ってるのか!」
「どうって…住んでる所は知られるだろうけど、別にそのくらい大したことじゃない。相手にしなきゃその内飽きて付き回ったりもしなくなるよ」
「馬鹿!!」
ついにアスランはキラを怒鳴りつけた。
まだストーカーに怯えているくせにそんなことを言うキラが、無性に腹立たしかった。
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正直助かった。あのままいけばアスランは激情にかられて手を上げていたかもしれない。
仮にそうなったとしても、ストーカーに対してなら正統性も認められると思うが、先に手を出すのはやはりいただけない。それに男ではなくキラを殴ってしまいそうだったのだ。
易々と男に侵入を容す、キラに怒りの矛先が向いてしまっていたから。
しかも正当性があろうとなかろうと、アスランは時期ザラ家の当主だ。暴力沙汰など回避するにこしたことはないし、そのくらいの知恵はある。
これまで一瞬たりとも、それを忘れたことなどなかったのに――…。
「ねぇ、あの人…」
ハッと我に返って、アスランは一旦キラを目で制し、手元のボタンを操作した。僅かなモーター音がして、運転手と後部座席の間に仕切りが出来る。
聞き耳を立てたりはしていないだろうが、これで完全に遮断されたわけだ。
何故こんなことをしたのか自分でも分からない。
ただ何となく嫌な展開になる予感はあった。
「…あの人、どうなるの?」
アスランの行動に少なからず驚いたようだったが、キラはそれでも質問を変えなかった。
「ストーカーのことか?」
「まさか警察に連れて行かれちゃうの?」
「そんなことはしない」
律儀に教えてやる必要もなかったが、キラがどんな反応をするのか知りたくなった。
「警察に突き出された方が良かったと思う羽目にはなるだろうがな」
「そ・んな――」
警察に連行されないと聞いて一瞬ホッとしかけたキラは、すぐに表情を強ばらせた。
「それってどういうこと!?一体あの人をどうするつもりさ!」
「お前は誰を庇ってるつもりだ!」
突如声を荒げたアスランに、キラの肩がビクリと揺れた。
「あのまま付いてこられてたら、どうなってたかちゃんと考えて言ってるのか!」
「どうって…住んでる所は知られるだろうけど、別にそのくらい大したことじゃない。相手にしなきゃその内飽きて付き回ったりもしなくなるよ」
「馬鹿!!」
ついにアスランはキラを怒鳴りつけた。
まだストーカーに怯えているくせにそんなことを言うキラが、無性に腹立たしかった。
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