混乱
・
唐突で今にも泣き出しそうな、情けない声だった。感情の起伏が全く予測出来ない。
男は眉を下げ縋るようにキラだけを見つめる。瞳は信じた相手に裏切られた哀しみだけに彩られていた。
「あんなに愛し合ったじゃないか。ずっと待ってたんだよ?いつもきみが乗っていた電車で。最近会えないと思ったら、こんな男に心変わりしてたなんて」
「電車って…まさか!あの痴漢は貴方だったんですか!?」
「―――痴漢?」
咄嗟に言ってしまった言葉をアスランに拾われて、頬に熱が集中した。今度こそ馬鹿にされると思った。
だが口調は至って厳しいものだった。
「心当たりがあるのか?」
「あ…えーと、バイト先に行くのに使ってた電車でなら。疑わなかったわけじゃないけど、男に痴漢する物好きもいないだろうって、普通はそう考えるじゃない。それにどうせ短期のバイトだったし、今はもうその電車も利用してないから」
何故キラが弁解めいたことを喋らされているのかが不思議だった。
「なるほどね…」
そういうキラは思考回路がどこか抜けている。
そこらのアイドル程度では裸足で逃げ出す容姿を持ってすれば、最早性別なんか関係ない。尤も容姿については無自覚なら分からなくて当たり前だが、法律で認められているとはいえ、男の自分と婚約しておきながら、男に痴漢されると考えないというのでは辻褄が合わないではないか。
「それで“ずっときみを見守ってきた”ね。キラが電車に乗らなくなったから、とうとう思い余って後をつけて来たってことか」
知らされた事実に、キラは本格的に気分が悪くなった。
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唐突で今にも泣き出しそうな、情けない声だった。感情の起伏が全く予測出来ない。
男は眉を下げ縋るようにキラだけを見つめる。瞳は信じた相手に裏切られた哀しみだけに彩られていた。
「あんなに愛し合ったじゃないか。ずっと待ってたんだよ?いつもきみが乗っていた電車で。最近会えないと思ったら、こんな男に心変わりしてたなんて」
「電車って…まさか!あの痴漢は貴方だったんですか!?」
「―――痴漢?」
咄嗟に言ってしまった言葉をアスランに拾われて、頬に熱が集中した。今度こそ馬鹿にされると思った。
だが口調は至って厳しいものだった。
「心当たりがあるのか?」
「あ…えーと、バイト先に行くのに使ってた電車でなら。疑わなかったわけじゃないけど、男に痴漢する物好きもいないだろうって、普通はそう考えるじゃない。それにどうせ短期のバイトだったし、今はもうその電車も利用してないから」
何故キラが弁解めいたことを喋らされているのかが不思議だった。
「なるほどね…」
そういうキラは思考回路がどこか抜けている。
そこらのアイドル程度では裸足で逃げ出す容姿を持ってすれば、最早性別なんか関係ない。尤も容姿については無自覚なら分からなくて当たり前だが、法律で認められているとはいえ、男の自分と婚約しておきながら、男に痴漢されると考えないというのでは辻褄が合わないではないか。
「それで“ずっときみを見守ってきた”ね。キラが電車に乗らなくなったから、とうとう思い余って後をつけて来たってことか」
知らされた事実に、キラは本格的に気分が悪くなった。
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