特別




◇◇◇◇


翌日もレイは店に現れた。飽きもせず注文時に繰り返される、恒例となりつつあるレイと交わすやり取りの後、コーヒーを届けたキラが唐突に言われた台詞は。

「何がいいですか?」


レイの言葉は端的過ぎて、時々非道く分かり辛い。表情から読み取ろうにも、余り感情を表すタイプではないらしくお手上げだ。
「話しが分からないんだけど?」
「失礼。クリスマスプレゼントの話しです」
「はぁ?」

キラは思い切り眉を寄せ、怪訝な顔になった。

「きみが、僕に?」
「ええ」
「いらないよ。貰う理由がない」
「理由ならあります」
カッブをソーサーに戻した音が、やけに大きく響いた。

「俺は貴方に振り向いて欲しいんです。そのためなら何だってする。知ってるでしょうがここへ通うのも作戦のひとつですよ」
「レイ…」
「しかも他に貴方の心を占める人がいるとなれば、俺が必死になる気持ちも解るでしょう?」
「他に?きみ、なにか勘違い…」
「あの夜、会った人ですね?」
「!!」


あの夜。
キラを射抜いた翡翠の光を忘れられない。

憎かった。悔しかった。憤った。


――――哀しかった。



そうだ。自分は誤解されて。

哀しかった、のだ。




「ヤマト先輩?」
一瞬記憶に囚われそうになったキラは、やや強くレイに呼ばれて、やっと現実に引き戻された。

言われる迄もなく、今は仕事中で、ここはキラのアルバイト先の喫茶店。光り溢れる店内は、あの夜の繁華街とは似ても似つかない。



アスランは、果てしなく遠かった。




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