特別




何もかもに恵まれていて、その上何でもソツなくこなす。群がる女どもは口を揃えて「クールな所がいい」と言うが、それは裏を返せば「冷めている」ということだ。
尻軽な女たちにとっては連れ歩くだけで優越感に浸れるのかもしれない。
だが、自分たちはアクセサリーではない。
人間なのだ。

イザークから見れば、そんなアスランは一々勘に障るし、同時に心配でもあったのだが。


(変わった…のか?)

それもおそらく良い方向へ。
でも一体何が変わったというのだろうか。そこまでは分からない。




不意にアスランが明確な意志を持って何かを探す目で周囲を見回した。そしてすぐにその瞳は目的のものを捕らえたらしい。
釣られるように視線を向けたイザークは、イブにありがちな光景を見た。

サンタの服を着せられた少年がケーキの売り子をやらされている。遠くて顔までははっきりと識別出来ないが、ようやく届く彼の声は少し高めの甘やかなものだった。きっとアスランもこの声に反応したのだろう。
不本意ながら付き合いの長さから、アスランの交友関係の殆どを認識しているはずのイザークではあるが、記憶にはない声だ。
ただの売り子のバイトだろうに、やけに必死になっていて、時折冷えきっているのか、両手を擦り合わせて息を吹き掛けている。



「おい、知り合いか?」
と振り返った場所に、既にアスランはいなかった。傍の自動販売機で飲み物を買っている。それもまた似合わない姿だと思った。
(しかも嘘だろう?ココアってか)
びっくりし過ぎて突っ込むことも出来ないイザークを放置し、アスランはつかつかと歩き出した。

あのケーキの売り子がいる方向へ。



「おいと言ってるだろう?」
そういうヤツだと知っていても、無視されるのは腹が立つ。思わず付いていったアスランの向かう先は、やはりサンタの男で間違いはないらしい。




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