特別




どうでもいいはずのキラのことなのに、そう思えば腹が立って仕方ない。イブには当たり前の光景だと分かっていても、すれ違う街行くカップルにまで苛々してくる始末だった。




「…――おい!」
突然肩を捕まれて心底驚いた。
その手の主はアスランの仲間の一人であるイザークであった。

そういえば今日のパーティに招待はしてあった。イザークはいつもつるんでいる仲間内の一人ではあるが、どことなく牽制し合っている間柄のため、特別連れ立つこともないという複雑な相手なのだ。



「何だ?」
だから声を掛けられる理由はなかった。用があったのならあの退屈なパーティの間に言えば良かったのにと、眉を顰めたアスランより、イザークは更に怪訝そうな表情になると、馬鹿にするように顎を振って先を示した。

「痛いのは俺ではないから構わんが、そのまま行けばぶつかるぞ」
「…………?」


アスランの進行方向には派手なブティックの看板が迫り出していたのだ。余り低い位置ではないが、長身のアスランなら頭くらいはぶつけたかもしれない。

「あ~…」
ふと、情けない声を聞いた気がした。だがアスランに限ってそれはないだろうと、気のせいで片付ける。

「放っておいて、貴様が恥をかく所を目撃するのも楽しかっただろうがな」
「……助かった」

少し、いや、かなり驚いた。
礼が出るとは思わなかったからだ。

嫌味には嫌味で返す。イザークにとってこの一つ下の男はそういう目障りな存在だったから。




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