特別




声に誘われたのか、その後二個はすぐに売れた。でも暫くやっても最後の一個がどうしても売れない。バイトの終了時間まで、もう残り少なくなってきた。

変な願掛けなどしなければ良かった。例え売れたとしても、幸せなことなど起こるはずはないのに。
これでは落胆も倍になる。

どんなに大きな声を出しても、立ち止まってくれない人々に、キラは段々哀しくなってしまった。




◇◇◇◇


恒例のザラ家の顧客を集めたクリスマスパーティのようなものからアスランが解放されたのは、やがて9時になる頃だった。

(……疲れた…)
次期総帥と目されるアスランは、父が主催のパーティとはいえ殆ど場の主役なのだ。お陰で余計なことを考える暇もなかったが。


てっきり来ると思っていたアスハ家からの招待はなかった。どうやらクリスマスにパーティを主催することはないらしい。構えていただけに些か拍子抜けしたのも事実だが、ならばキラはどうしているのだろうと、今度はそちらの方が気になってくる。



キラには腹が立つばかりだというのに。

気が合わないと言ってしまえばそれまでたが、それにしたってすっぽかしはないだろう。
多分断るだろうと思った誘いを受けておいて、来ないなんて最悪だ。考えられる一番非道いやり方だと怒りも頂点に達したアスランは、あの日、他の女など呼ぶ気も失せて、結局は一人で帰宅したのだった。



どうせあのあばずれのことだ。今頃は誰か他の男とでも宜しくやっているに違いない。




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