一番目




無神経といってしまえばそれまでだが、まるで道具のように扱っておきながら、家族として受け入れているなどと言われても、キラが素直になれないのも道理だと腹が立ったのだ。その上キラが“恥ずかしがっている”と思っているだと?


「…―――随分上からものを言われるんですね」
気付いた時には言ってしまっていた。阿るつもりはないが、機嫌を害ねてもいいことなどない相手なのに、止まらなかった。

キラを蔑まれたのが、何故だか無性に悔しくて。


「それではキラでなくても面白くないでしょうね」

「え…?」
「失礼。人と会う約束がありますので」


その人というのは勿論キラのことだったが、別にわざわざカガリに教えてやる必要はない。
これ以上話す気も失せたアスランは、早々にその場を立ち去ることに決めた。というか、自分がこれ以上、おかしなことを言ってしまう前に。

が、あっけなく袖にされたことが余程気に入らなかったのか、すぐさまカガリが取って返した。
「待て……てっ!ぅわっ!!」
「!?」
急激な動きに付いていけなかったドレスの裾が足元に絡んだのか、カガリが大きく体勢を崩した。咄嗟に差し出したアスランの腕に縋って、ことなきを得はしたものの。

「お嬢様というものは、ドレスのさばきかたくらいは、当然知っているものだと思っていたが?」
直ぐ様頭上から降ってきた容赦ない嫌味に、カガリは瞬時に真っ赤になった。
「う・煩い!!さっさと放せ!!」
「これは失礼。ですがしがみついているのは、貴女の方です」
「~~~っ!!」

返す言葉もなく、カガリは乱暴にアスランの腕を振り払った。
「では」
何事もなかったような顔で今度こそ立ち去るアスランの背中を見つめながら、助けてもらった礼も言えなかったと、カガリは後になってやっと気付いたのだった。




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