一番目




この集まりにウズミが来ているとは限らないが、見付かって「息子の許婚者だ」などと紹介でもされたらたまらない。パトリックなどは彼らと親交の出来る願ってもないチャンスだと思うかもしれないが、アスランは違う。確かに彼らとのパイプは欲しいところだが、だからといってウズミやキラに頼るようなやり方は死んでもごめんだった。

彼らに自分を認識させる時は、あくまでも実力で認めさせたい。

青臭くつまらないプライドだとは思うが、アスランはそう決めていた。




不愉快そうに眉間を寄せて、サッサと件のレストランへ行ってしまおうと足を早めたアスランだったが、突然空気にそぐわない大声がして立ち止まった。
例えば誰かが倒れて悲鳴が上がったり喧嘩が始まったりしたのだとしても、通りすがっただけのアスランに関係などある訳がない。加えてわざわざ騒ぎの元凶を見に行くほどの野次馬根性も希薄である。

だがその大声は悲鳴でも怒声でもなく、自分の名前を呼ぶ女のものだったのだ。



こんな場所に来るような女に知り合いはいないはずだと、とうとう完全に眉間に縦皺を刻んだアスランは声のした方向に視線を巡らせた。

「あ!やっぱりお前、アスランじゃないか!!」


シンプルだが一見して仕立ての良さそうな緑のドレスを身に纏った金髪の女が、裾の乱れなど意に介さない様子でこちらへと駆け寄って来る。


最初、アスランにはそれが誰なのか分からなかった。
しかし近付くにつれ、彼女のキラに通じる面差しに、姉のカガリ・ユラ・アスハだと思い出した。

大貴族であるアスハ家のご令嬢の突然の登場に、アスランは取り敢えず礼を取ろうと頭を下げた。




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