一番目
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たった一度だけアスランがアスハ家を訪れたことがあるが、その時でさえカガリは彼に何の興味も抱いてなかったようだった。その後だって今日に至るまで顔を合わせる機会があったとは考え難い。
アスランがアスハ家との繋がりを欲しがっているのは明白だが、キラを無視してアプローチするとも思えなかった。
ならばやはり今夜、カガリの気持ちを変える何かがあったのだろうか。それも“会いたい”と願う、何かが。
「おい?キラ?」
そうだとしても何を躊躇うことがある?
好都合ではないか。元々ウズミがキラを差し出したのだって、大事な一人娘の意志を無視してザラ家に嫁がせるのが偲びなかったからだ。
だがカガリが望むのなら話は別だろう。カガリがアスハ家を継ぐことはなくなるが、その子供なら跡取りとして立派に役目を果たすことも可能だ。
キラも嫌な相手と結婚なんかしないで済むし、八方丸く収まる。また違う縁談を持ち込まれるだろうが、それはその時考えればいいのだ。
「…――うん。じゃあ悪いけど、ちょっと見て来てもらえるかな?」
途端にカガリの表情が明るくなった。
「よし!待ってろよ!すぐに行って来るからな!!」
アスランの向かった方角から、ホテル内のレストランだと見当をつけていたカガリは、ドレスの裾も気にせずに駆け出した。
だから知らない。
残されたキラがそんな彼女を憂い顔で見送ったことを。
◇◇◇◇
その辺りに居たボーイに命じレストランに問い合わせをさせたものの、確かにアスランはついさっきまで居たらしいが、既に帰宅したとの返事だった。
もう一度会って話をしたいと思っていたカガリは落胆し、トボトボとキラが待っているはずのホテルの前まで戻ったのだが。
「あれ?キラ?」
そこに既にキラの姿はなかった。
(黙って帰ったりして、悪かったかな)
だけどカガリとアスランが二人でいる場面は見たくなかったのだ。疎外感も嫌だった。
たった一人で家路を辿るキラを嘲笑うかのように、見上げた夜空には一番目の星が輝いているのだった。
了
20091031
たった一度だけアスランがアスハ家を訪れたことがあるが、その時でさえカガリは彼に何の興味も抱いてなかったようだった。その後だって今日に至るまで顔を合わせる機会があったとは考え難い。
アスランがアスハ家との繋がりを欲しがっているのは明白だが、キラを無視してアプローチするとも思えなかった。
ならばやはり今夜、カガリの気持ちを変える何かがあったのだろうか。それも“会いたい”と願う、何かが。
「おい?キラ?」
そうだとしても何を躊躇うことがある?
好都合ではないか。元々ウズミがキラを差し出したのだって、大事な一人娘の意志を無視してザラ家に嫁がせるのが偲びなかったからだ。
だがカガリが望むのなら話は別だろう。カガリがアスハ家を継ぐことはなくなるが、その子供なら跡取りとして立派に役目を果たすことも可能だ。
キラも嫌な相手と結婚なんかしないで済むし、八方丸く収まる。また違う縁談を持ち込まれるだろうが、それはその時考えればいいのだ。
「…――うん。じゃあ悪いけど、ちょっと見て来てもらえるかな?」
途端にカガリの表情が明るくなった。
「よし!待ってろよ!すぐに行って来るからな!!」
アスランの向かった方角から、ホテル内のレストランだと見当をつけていたカガリは、ドレスの裾も気にせずに駆け出した。
だから知らない。
残されたキラがそんな彼女を憂い顔で見送ったことを。
◇◇◇◇
その辺りに居たボーイに命じレストランに問い合わせをさせたものの、確かにアスランはついさっきまで居たらしいが、既に帰宅したとの返事だった。
もう一度会って話をしたいと思っていたカガリは落胆し、トボトボとキラが待っているはずのホテルの前まで戻ったのだが。
「あれ?キラ?」
そこに既にキラの姿はなかった。
(黙って帰ったりして、悪かったかな)
だけどカガリとアスランが二人でいる場面は見たくなかったのだ。疎外感も嫌だった。
たった一人で家路を辿るキラを嘲笑うかのように、見上げた夜空には一番目の星が輝いているのだった。
了
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