一番目




もしもこの先そういう場所を望むなら、母のような相手か現れた時だ。決していつ裏切られるか判らないどころか、未だ信頼関係の構築すらままならないアスランに求めては駄目なのに。

一度心を許してしまったら。手に入れた場所を失えば。

多分今の自分には戻れない。
もう二度と意地のプライドを掲げて戦っていくことなど不可能だろう。

そんな自分には何の価値もない。
生きている意味もない。


それを知っているからウズミやカガリ、勿論アスランにも気を許さないよう、常に心を閉ざして来たつもりだったのに。




「……うん。そうだね、関係ないよね」

まだ諦めてなかったのだ。
この心は。


誰かの唯一になることを。


なれやしないのに。
自分など“二番目”が相当なのに。

なのに、まだ。



それに衝撃を受けた。




「キラ?」
カガリの戸惑う声に、今自分がどんな顔をしているのかに気付いて、キラは必死で弱い考えを頭から振り払った。

「そうだよね。居るわけないの分かってて、何を焦ってたんだろ。こんな格好で来られちゃアスランにも迷惑だし」
「それは、まあ…」
アスランがそれなりの服装だったのを見ているカガリの率直な意見が、更にキラの心を抉る。

「帰るよ。じゃあね」
「あ、おい!」
「父さんに宜しく」


「なんなら、私が確かめて来てもいいぞ!」
意外な言葉にキラが目を丸くするのを見て、カガリは慌てたように言い訳めいた台詞を重ねた。
「ほら!だってもしもってこともあるし、折角ここまで来ておいてさ!」
そこで初めてキラはいつものカガリと違っていることに気付いた。
(何だろう。会いたがってる?カガリがアスランに?)




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