誤解




「そうだろう!?男が男に告白されるなんて、冗談以外の何だって言うんだ!」
「この国では同性婚も認められてるはずですが?」
「そんなマイノリティの話はよしてくれ!仮にきみの気持ちが本当だったとしても、僕ならかつて好意を持っていた相手に、こんな暴力は振るわない!!」
何故か自分がいつになく短気になっているという自覚はあった。だがそれを差し引いてもこんな扱いを受けるいわれはない。
仇に対するような言い方を止めるつもりもなかった。

キラの反撃に僅かに瞳を大きくして驚いた様子を見せたこのレイと名乗った男は、しかし次の瞬間には想像もしていなかった酷薄な笑みで今度はキラを驚かせた。

「――――それが本当の貴方なんですか?」
「は?」
「俺の知る貴方は終始当たり障りのない作り笑顔を振りまく、ある意味人間味のない人でしかなかった。それでも充分ではありましたが、本来のキラ・ヤマトがこんな激しい一面を持ち合わせた人物であるならば話は変わってくる」
「それは生憎だったね!僕は見かけだけの人形じゃない!」


そうだ。お綺麗な偶像の中で笑っているだけの人形なんかではない。そんなものを求めているなら、キラは最も遠い人間だといっていい。

滅多なことでは気付かせない自信はあるが、本当のキラは決して主体性のない流されるだけの性格ではなかった。
そう見せているのは、他人を信用していないからなのだ。

「それが分かっただけでも今夜会えて良かったと思います」
「だったらサッサとどいてくれないか?さっきも言ったけど、僕は暇じゃないからね」

キラは溜息と共にレイの腕をどかそうと手をかけた。だが顔の横についた彼の腕は、緩む気配も見せなかった。




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