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(何か晩ご飯の代わりになるような物、あったっけ…)
ｷﾗは自宅の冷蔵庫の中を思い描いて眉をしかめた。簡単な料理なら出来ないこともないが、元来食には関心が薄いﾀﾁが災いした。生憎とすぐに食材になるようなものすら浮かばない。
(でも食べないと駄目だよね)
こんなことなら勧めてくれた賄いでも食べてくれば良かった。実習が長引いたためﾊﾞｲﾄに入るのが少し遅れたから、それも遠慮してしまったｷﾗだっだ。

さてどうするか…と考えていると、不意にすぐ後ろに足音が聞こえ、次の瞬間強い力で腕を引かれた。
「っ!?いったっ!!」
何が起こったかも把握出来ないまま、ｷﾗはもんどりうって背中を強かにぶつけた。固い感触は建物の壁のようだった。咄嗟のことに一瞬呼吸が止まり、酸素を求めた肺は咳き込むという反乱を起こす。
「げ・ほっ！ごほごほ!!きみっな・にを――」
ようよう上げた顔の間近に、今さっきまで話していた男の顔。その近さもさることながら、彼の瞳に冷たい光が浮かんでいるのに気付いてｷﾗは息を飲んだ。

そっと周囲を伺うと、自分はどこかのﾋﾞﾙの壁と男の体に挟まれて立っている状況だった。顔の両側で男が壁に手をついているから、すぐには逃げられそうもない。
(なに!?こいつ、危ない奴!?)
自慢ではないが腕に自信など皆目ない。しかしｷﾗも男だ。勝てないまでも一矢報いてやると、相変わらずの至近距離にある男の顔を、負けじと睨み返した。


「…貴方が俺の告白をなかったことにしようとするからですよ」
彼の声は手荒なことをした割には平静なものだった。
それが却って凄みを増す。

「ぼ・僕はきみと違って暇じゃないんだ！なんの冗談かしらないけど、付き合ってられないんだよ!!」

「…――――冗談？」




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