誤解




「ああ、やっぱり先輩だ。お久し振りです」
随分と綺麗な男だ。だが生憎とキラの記憶の琴線には引っ掛かってこない。“先輩”と呼ぶからには年下なのだろうが、均整の取れた体はスマートで、既にキラの背よりも僅かに高い。何よりも落ち着いた雰囲気が彼を年よりも大人に見せるのかもしれなかった。

(なんか…アスランと被る)
悔しさ半分、ふとそんなことを考えて、キラは慌てて否定した。
(馬鹿!!なんでここでアスランが出てくるんだ!今の無し無し!!)
それよりも問題はこの男が誰かということである。
何せ“付き合いは広く浅く”を信条とするキラには、かつて「ヤマト先輩」などと呼ばれるような後輩が居た覚えはなかったからだ。


「…………あの…」
「ああ、やっぱり覚えてませんか」
申し訳なさそうにおずおずと切り出したキラに、静かに答えてくれる男。笑みは苦笑に変わったが、気を悪くした様子はなさそうでホッとする。
「俺は貴方の高校の後輩なんですよ。貴方が三年の時一年だったから知らなくても当たり前です。気にしないでください」
「はぁ」
てことは二歳も下ということだ。
自覚があるとはいえ、華奢で女顔の自分の密かなコンプレックスを、的確に刺激する相手にちょっとムッとする。
キラがそんなことを思っているなどと想像もつかないだろうその男は、笑うとそれなりに年相応になる笑顔に戻り、有難いことに自己紹介をしてくれるようだった。
「話したのも一度だけです。成績優秀者が表彰されたことがありましたよね。俺が一年で選ばれた時の三年代表が貴方でした」


それなら記憶がある。ウズミに進路を言い渡されて必死の巻き返しが功を奏し、結果が現れて来た頃だ。




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