誤解




少し離れていても判るくらい顔色が悪い。レイの腕に倒れ込んだのだから、実際具合も良くないのだろう。
だがそれだけではない。

キラの姿はレイの目に、何故かドキリとするほど小さく映った。



「…―――いいんだ」
全く考えていることを読ませない表情で、やがてキラはポツリと言った。
「いいって…このままじゃ誤解されたままですよ!」
“大事な人なんじゃないですか?”と続くはずの言葉は、しかしレイの喉元で引っ掛かって声になることはなかった。

言えば、キラが泣いてしまうのではないかと思ったからだ。


「いいんだよ」
自分に言い聞かせるかのように、もう一度繰り返された台詞。
「元から誤解するほど、お互いのことを知ってるわけじゃないんだから」



泣いているのかと思った。

実際のキラは泣いてなどいなかったが。


ただ無表情でいることで、何かを必死で守ろうとしている。堪えようとしている。
そんな気がした。




「悪かったね、変なことに巻き込んで」
何故、キラが謝るのか。
ちょっかいを掛けたのは、レイの方なのに。

起こった出来事が余りに衝撃的で、忘れてしまったのだろうか。




その後緩慢ともいえる動きで、その場から立ち去るキラの後ろ姿を、レイは苦い気持ちで見送る他なかった。


今度こそ、その小さな背中を追うことさえも出来ずに。





20090915



†††後書き†††


レイ、間男編でした。




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