誤解




「な――!違っ!」
「へえ、違うって?じゃあお前は行きずりの男だろうと、誰彼構わす媚を売るってことなのか?」

「――――――っ!!」




これ以上ないくらいの非道い侮辱の言葉だった。

元々顔色がいいとはいえなかった上に、みるみる内に青ざめていくキラに、原因の一端を作ってしまったレイだったが、いや、だからこそ黙ったままではいられなかった。

「あの…これは貴方が考えているような――」
「きみには聞いてない。黙っててくれないか」

その冷たい声と瞳に心底ゾッとした。
これでは本当のことを言ったところで、言い訳と取られるだけになりそうだった。

縋りついたままのキラの身体が小刻みに震え始めている。


実際は言葉が出てこないだけだったが、無言でいるキラを“答えられない”と受け取ったのだろう。やがてアスランは唇だけで笑った。

「薄汚い」



たった一言。

それだけを吐き捨てて、アスランはキラたちに背を向けた。


反射的に追おうとしたレイは、しかしブレザーの袖を引かれて振り返る。
「何故止めるんです!?あの人行ってしまいますよ?このままじゃ誤解されたままになる!」


振り返った視線の先で、キラはぽつんと立っていた。




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