誤解




あとシートひとつ分。

空いた席はそのまま、自分たちの距離を表しているかのようで不快だったのだ。


(なら俺は)
彼との距離を縮めたいと願っているのだろうか。シートひとつ分という目に見えて突き付けられた距離に、あんなに苛立ったのだから。

(そんな、まさかだよな)



いくら可愛くて華奢でそこらの美人では全く歯が立たない相手だったとしても。
キラ・ヤマトは“男”なのだ。

女に不自由しないどころか、鬱陶しいくらい向こうから群がってくるこの現状で、なんで寄りにも寄って男など。
しかも彼は当然のように一番を手にしてきた自分に、アスハが差し出した“二番目”である。



結婚になど、夢も興味も最初からなかった。アスランにとってそんなもの一年経てば年をとるくらいの通過儀礼のようなもので、精々自分が背負うことになるだろうザラ家にとって有利な相手を娶ればいいと思っていた。そこに当事者同士の感情など必要ないし、あっても切り捨てなければならなくなった時、邪魔になるだけだ。
分かっている。


第一自分にはそういう感情が抜け落ちていると思う。
“周りが見えなくなるほど誰かを想う”気持ちなど、きっと一生味わうことはないのだろう。

それで良かった。




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