誤解




ひょっとしたら“好意を持つ”というのとは違うのかもしれない。
往生際悪く、未だ許婚者として父に押しつけられた反発心の方が大きいくらいだから。それにキラ・ヤマト自身も、アスランにあからさまに嫌悪の視線を向けて来るのだ。彼にも事情はありそうだったが、あそこまで正面切って敵愾心を顕にされたのは初めてだ。
どれだけ“成金の息子”が気に入らなくても、キラの方にも止むに止まれぬ“事情”とやらかあって婚約までしたのなら、せめて笑っていればいいものを。
(笑えばきっともっと可愛いのに…)

見た目は同じ男とは到底信じられないほど、華奢で全てが小造りだった。その小さい顔に不釣り合いなくらい紫の瞳は大きくて印象的だ。一度見れば忘れない。不満があると唇を尖らせるのが癖なのか、それがまた幼さを増す。
ごく自然に笑えばどれだけ可愛いだろうかと考えてしまったアスランは、ひっそりと自嘲した。

そんなことが有り得ないのは確実だから。




まだ新緑の綺麗な時期だった。偶然逢ってしまったとはいえ、何故自分はプラネタリウムに誘ったりしたのだろうか。
あの時は必死で冷静な顔を装ったものの、本当はかなり動揺していた。

だからつい成り行きで?


(いや…成り行きには違いないが)

一緒に観るのが当たり前のことだと感じたからだ。

独りと決めていたのに。



それを証拠に今だってキラ以外の誰かを、あの場所へ連れて行くことなど考えられない。

でも実際アスランはキラを誘った。彼がそれに戸惑ったのも気付いたが、半ば強引にである。
それどころか、シートをひとつ空けて座った彼に内心で苛立ったりもした。




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