誤解



◇◇◇◇


アスランは苛立つ気分を鎮めようと、宛てもなく一人夜の街を歩いていた。

別に大学から真っ直ぐ帰らないのは珍しいことではない。親しいというのとはニュアンスが違う気がするが、いつもつるんでいる友人は少なくなかったし、よく「整っている」と言われる容姿とザラ家の財力に群がる女はそれこそ事欠かなかった。
元々それほど楽しいものでもなかったが、友人たちは誰もかれも似たような境遇だったから、あれこれと深く突っ込んで来ない所が悪くない居心地だった。女はそんなアスランたちの気が向いた時の暇潰しのようなものでしかない。向こうもアスランたちとSexするのを一種のステイタスと思っているのが丸分かりだったし、またそういう相手を選んでもいた。
必死に努力しなくても、何でも出来たし、出来なくても困ることはない。ただ敷かれたレールの上を歩いていくだけ。
皆似たり寄ったりだった。


だから気付かなかったのだろう。

そんな当たり前だった生活が、突然味気ないものに変わってしまったのだ。いや味気ないものだと気付かされたと言ったほうが正しい。



原因は判っている。


あの、キラ・ヤマトという少年。




彼があまりに鮮烈に、アスランの前に現われたからに他ならなかった。




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