誤解




プラネタリウムでのほんの小さな出来事が、二人の距離を少しだけ縮めたように思えたのは単なる気のせいだったのかもしれない。またはそう感じたのはキラの方だけで、アスランにとっては偶然は偶然でしかなくて、誘ったのも気紛れ。深い意味などなかったのだろう。

斯くして、もしかしたら何かが変わるかもしれないと、僅かに期待した未来は、見事に肩透かしを食らったようだった。


何も変わらない。よく考えれば変わるわけなどない。


馬鹿馬鹿しいと自嘲の笑みを刻んだトコロで、心に吹く虚しい風は、理性では否定出来ても感情が誤魔化し切れないのも充分解っていた。




◇◇◇◇


「はぁ…」
大学と一人暮らしのアパートの往復。時たま単発のバイトをこなしてそれ以外は勉強するのがキラの日常。なのに最近どうしてかそれが無性にしんどい。

今日は慣れない流行りの創作居酒屋でバイトのピンチヒッターだったのは確かだが、決して稼ぎの悪いものではなかった。華奢な自覚はあっても実はキラは割と元気な方だ。どれほど疲れても一晩寝れば翌日には復活する。若いから当然なのだろうが、風邪すら滅多にひかないのは、生来頑丈に出来ている証拠なのだろう。
3日間のバイトも今夜で終わり。慣れない様子でそれでも真面目に働くキラに、居酒屋の店長は「内緒だぞ」と言ってバイト料を上乗せしてくれた。仲間も皆気持ちのいい人たちで、キラにしては珍しく去り難い場所だと思った。

でもそれは許されない。ウズミにしてみれば赤子同然の意地でしかないのも承知している。だけどそんなちっぽけな矜恃に縋らないと、自分が崩壊してしまいそうになるのだ。




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