真昼の星




◇◇◇◇


「じゃあな」
上映も終わって建物を出た所で、アスランはアッサリとキラに背を向けた。これがデートなら駅前に戻ってお茶でも…というパターンだろうが、生憎そういう関係ではない。
そんな誘いを受けても困るだけだが、少しだけ物足りなさを覚えたのも事実だった。

「…うん。あ、チケット有難う」

だが気の利いた台詞なんか出て来るわけがない。
早くしないとアスランはどんどん遠ざかってしまっている。


「ね・ねえ!教えて欲しいんだけど!」
慌てて振り絞った声に、無視されても仕方ないと思いはしたが、幸い彼は足を止めてくれた。
「星が好きって言ったよね。どうしてだか聞いていい?」

ずっと疑問だった。
だってあのアスラン・ザラである。

星が好きならそれでもいいが、わざわざプラネタリウムにまで足を運ぶなんて、余りにも似合わないから。



「…何でそんなこと聞くんだ?」
長い溜息の後、振り返らないアスランから返ってきたのは、冷めた声音。どうせ興味もないくせにと言わんばかりだ。それは自分もキラになど興味はないと言われているも同然だった。


「…別に。気になっただけ」
力のない声が出てしまった自分が嫌で、強く唇を噛む。



キラは強く生きようと思ってきた。
独りでもずっと。

この程度の拒絶にヘコんでいるようでは駄目だと分かってはいるが、実際はこうだ。まるで伴ってない。


他者を寄せ付けないのは、それが望んだって叶わないことだからだ。
誰かに傍に居て欲しいなんて贅沢な夢。

夢は叶わないから夢。




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