真昼の星




(あれ…?)
鬱々と考え事をしながら歩いていたキラは、いつしか駅前の街並を通り抜けていて、見たことない場所へ来てしまっていたことに気付いた。
周囲は公園のように木々が植えられていて、白い建物が正面にポツンとひとつ。然程大きくないそれは、よく見れば天井がドーム型をしていた。
(プラネタリウム?こんな所に)
大学に通い始めて随分経つが、全然知らなかった。天体に興味などなかったキラだが、それでも入ってみようと思ったのは、遥か昔、母に連れられて行った覚えがあったからかもしれない。
そういえばあの時は、急に真っ暗になって、泣き出してしまった。喜ばせようと連れて来てくれた母には申し訳ないことをしたなと少しだけ可笑しくなる。

自分は暗闇の恐い子供だったから。
今も、好きではないけれど。




チケット売場を探すとはなしに探していたキラの視界に、ふと人影が映った。平日の昼間にプラネタリウムに来る物好きなど自分くらいだろうと思っていたのに、どうやらご同類がいたようだ。そしてその人影がある場所は、丁度お目当てのチケット売場のようだった。


(…――――え…?)
キラも早速そちらへ向かおうとして、ふとその足を止めた。

先方も人の気配に気付いたのか、何気ない仕草で振り返った。



「あ……?」

驚きの声を発して焦点の合った瞳は、澄み切ったエメラルド。
翠色の瞳など珍しくはないが、こんな綺麗な目をしている人間を、キラは生憎一人しか知らない。


惜しげもなくその瞳を見開いてキラを見た人物は。


先日めでたく正式に婚約を取り交わしたキラの許婚者、アスラン・ザラに他ならなかった。




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