真昼の星




(…―――恋人)
浮かんだ言葉に連動するように嫌なことを思い出して、キラの眉が寄った。

恋人はいないが、婚約者はいる。



アスラン・ザラ。


今日はキラの婚約者として、カガリのバースデーパーティに呼ばれているはずだ。ザラ家を成金だと恥じている彼は、アスハ家のパーティに呼ばれたことを名誉とし、嬉々として参加することだろう。

(でも…)
キラはアスランが自身を蔑むほどには、悪く思ってない。寧ろその逆だと言っても良かった。
スラリと伸びた長身。比較的細身ではあるが、抜群のスタイルを崩すほどではない。繊細といっていい目鼻立ちは究極に整っていて綺麗だ。
艶やかな髪は宵の闇色。
そして何より人を引き付けるあの翡翠の瞳。

父親には会ったがまるで似た所は見出だせなかったから、きっと母親は綺麗な人なのだろう。


(ズルいなぁ…)

多分自分は彼のことが好きなのだ。
嫌えるわけがない。



彼はあんなに綺麗なのだから。



でも受け入れられない。

それにはつまらないプライドが邪魔をする。


本当は欲しくて堪らないクセに。




せめてこんなじゃなくて、普通に出会えていたらとも思う。そうすれば話すこともなかっただろうが、反面こんな気持ちも知らなかった。憧れだけでいられた。

誰かを欲しいと思う気持ちなど、知らなくてよかった。


そんなもの認められなくて反発した。
望んだってどうせ手に入らないのだ。
無い物ねだりするなんて、みっともない姿など知られたくなかったから。

ただでさえ妾腹の息子だと、彼は自分を見下しているというのに。


だからキラから言った。行くあてがないのは事実だから。こちらから断るつもりはないと。
精々利用させてもらうと。

だが心が乱れる。
ただ手放したくなかっただけと、心が訴える。

誰を偽ろうと、自分に嘘はつけないのだ。

そんなの辛いだけなのに。


キラはふるると頭を左右に振った。
もう考えるのは辞めようと思った。

今日は誕生日だ。

好き好んで暗い思考に陥ることなどない。




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