真昼の星




あちらでは毎年この日に盛大なパーティが催されるらしい。たかが誕生日に…と庶民育ちのキラなどは馬鹿馬鹿しくも感じるが、トコロ変われば品変わるという。その世界にはその世界の常識というものがあるのだろう。
日陰の身のではあるが、一応息子と認知されているキラにもパーティには、主賓ではなく家族として出席するように連絡が来る。しかし行かなくても別段咎められることはないから、その誘いに乗ったことはなかった。何が嬉しくて自分の誕生日も覚えてない姉の祝いをしないといけないのか。ことによると向こうも招待するのは只のお義理で、本音はキラなんかに来て欲しくないのかもしれない。
性根は悪い人たちだと思ってはいないが、キラが面白可笑しい存在ではないことだけは確かだろうから。

それに忘れてくれていた方がキラにとっても好都合だ。流石にパーティの主賓にはならないとしても、やたら豪華なプレゼントとか贈られても困るだけだし、心にもない「おめでとう」を言われても嬉しくない。


だから自分しか知らない誕生日を、唯一バイトを入れないことを自分へのプレゼントにして過ごす。


教授の都合で午後からの講義が休講になり、キラはすることもなく、フラフラと普段はあまり行かない駅前通りを歩いた。
半端な時間のためか、壮年の女性や足早に歩くビジネスマンくらいしかいない。休日には多くの人が出回るのだろうが、今はその片鱗も伺えなかった。


(虚しいよね)
閑散とした街並が更にその気分に拍車をかける。
寂しいとは思わないが、虚しい。恋人でも居れば違うのだろうが、キラの心を掴む相手は未だ現れてはいなかった。




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