真昼の星




初めて会った時から敵意を隠そうともしてなかった。
尤も自分もそうだったから彼のことばかりは責められないが。

おもねるような視線にはうんざりしていて、いつしか他人を信用出来なくなっていたアスラン。皆自分の機嫌を損なわないようにしているだけなのだ。アスランのバックグラウンドにある、ザラ家の資産を見ているだけ。または幸い人より優れた容姿のアスランと付き合っているということを自慢したいだけ。
誰も本当のことなど言ってない。

笑ってはいても、心からのソレとは限らないのだから。



だが多分キラは違う。
真正面からアスランを睨み付ける紫藤の瞳。
あれは自分を本気で嫌悪している者の目だ。良くは知らないが“事情”とやらで、父であるウズミの決めたことにおとなしく従っているだけというのは、きっと真実なのだろう。

その敵意が自分の“許婚者”のものであることには、微妙な気分になるが、少なくともキラのその感情に嘘や誤魔化しはない。
キラの態度が高貴な血を引く者の矜恃かと最初に会った時は思ったが、それも何となく違う気がする。


そこでアスランは可笑しくなった。
こんなに他人のことを考えるのは初めてだと気付いたからだ。

そういえばプラネタリウムも、行くのは一人でと決めているにも関わらず、ごく自然に彼を誘ってしまった。指摘されて初めて自分の行動に驚いたくらいだ。

これもらしくないことではあるし、一緒に見上げた星空に居心地の悪さは全く感じなかった。


誰かと思い出を共有することなど、有り得ないと思っていた筈なのに――…。




(キラ・ヤマトか…)
もう少し話してみるのも悪くないと、アスランは車のシートに深く体を預けて瞳を閉じたのだった。


悪い気分ではなかった。




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