真昼の星




◇◇◇◇


妙に運転手に落ち着きがない。



待たせていた車に乗り込む前から、アスランは専属の運転手の男がいつもと様子が違うことに気付いていた。それを証拠に彼は今も、アスランのいる後部座席にルームミラー越しに何度も視線を寄越してくる。


「…―――何だ?」
この運転手はアスランがまだ幼稚舎へ行っていた頃からの付き合い。気心は知れているとはいえ、決して雇われ運転手の領分を踏み出さないトコロが、アスランは割と気に入っていた。屋敷にいる大勢の使用人など顔もロクに覚えていなかったが、彼は違った。時々他愛もない話をする程度には親しかった。
だから敢えてアスランも尋ねたし、運転手も忌憚なく思ったことを述べた。
「いえ、いつもとご様子が違って見えましたので」
僅かにアスランの瞳が見開かれる。どうやら様子が違ったのは、彼の方ではなくて自分だったらしい。
「どんな風に?」
「それを探っておりましたが、分かりません」
「……………………」


それきり車内は静かになった。アスランが聞かない限りは余計なことは一切話さない。

それはもういつもの彼だった。




アスランは運転手の言った言葉を反芻してみた。
自分が“様子が違う”とすれば、原因は今さっきまで一緒にいたキラ・ヤマト以外に他ならないだろうから。




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